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7-10 明日香の依頼 2

last update Terakhir Diperbarui: 2025-04-11 22:41:12

「え? 琢磨……お前も行くのか?」

翔が突然声をかけてきた。

「当り前だろう? 朱莉さんを1人でホテルまで帰せるわけないだろう?」

「いや……実は仕事の件で、どうしても早めに解決しなくてはならない案件があるんだが……」

「だったら、お前1人でやればいいだろう? 俺はもう行かせて貰うからな。さ、行こう。朱莉さん」

琢磨は朱莉を促して、連れて行こうとした矢先、翔が強く言った。

「駄目だ! 琢磨、お前はここに残れ! お前と俺の2人で共有していた仕事の件なんだよ! だからお前は俺と一緒にここに残って仕事をして貰う。これは……業務命令だ」

その言葉に琢磨は翔をキッと睨み付けた。

「ハッ! 業務命令……か。分かったよ」

琢磨は呟くように言うと、朱莉を見た。

「ごめん。朱莉さん。ホテルへは1人で帰って貰えるかい?」

「ええ、大丈夫ですよ。病院の前にタクシーは止まっていましたし、1人で帰れます」

そして次に朱莉は明日香と翔に挨拶した。

「すみません。それでは失礼致します。又明日伺いますね」

そして朱莉は頭を下げると、静かに病室を後にした——

****

 明日香の洗濯物という荷物を抱えた朱莉は病院の前でタクシーを拾い、行き先を告げた。

タクシーは約20分程でホテルに到着したところで、朱莉は運転手に声をかけた。

「あの、10分程で戻って来れると思いますので、すみませんがまだここで待っていていただけますか?」

「ええ、大丈夫ですよ」

「すみません。よろしくお願いします」

朱莉は頭を下げると、明日香のクリーニングを持って足早にホテルの中へと入って行った。

フロントで、急ぎでクリーニングを仕上げて欲しいと朱莉は頼むと、すぐにホテルを出た。ホテルの前には先程朱莉が乗って来たタクシーが待っていてくれている。

「すみません、お待たせしました」

「いえ。お客様。全然待っていませんから大丈夫ですよ。それで、どちら迄行かれますか?」

「あの、国際通りまでお願いします」

「国際通りの何処で降ろせばよろしいですか?」

「何処……う~ん……何処……?」

朱莉は考え込んでしまった。何せ沖縄に来るのも初めてだし、国際通りと言うのも初めて知ったのだ。するとタクシードライバーが笑った。

「それでは国際通り入口までお乗せしましょうかね?」

「はい、それでお願いします」

 タクシーは約15分程で国際通り入口へ辿り着いた
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